高木はゆっくりとしたドリブルで中央付近までやってくる。

綾音は今までと雰囲気が違うのに気付いたのか、微妙な距離を取りつつ高木へとつく。

リョウはマークも付かないでゴール下に立っていた。

それは自分の能力、ブッラディアイズを有効に使うため。

ブラッディアイズ使用時は自分の行動範囲内であればボールは取れる。

その事からリョウがゴール下にいるという事で、相手は迂闊にゴール下にパスまたはドリブルをしてこれない状況になる。

残された道はロングシュートになるが、そこは打たせてもかまわないと考える。

いくらバスケ部でも外からは確実に決めれるわけではない。

その意味でリョウのポジショニングは適切と言えよう。

ダッ

高木スピードがあがる。

それと同時に他の4選手のスピードも変わった。



「さて、どうくるのかね」

リョウはニヤリと不適な笑みをしつつ、相手の出方を見ていた。

その赤い目で。



ホームパーティー
Tr.09:君といつまでも




高木はセンターサークル付近から外に逃げるようにドリブル。

綾音も振り切られずに付いてきている。

城嶋、利根、坂田の3人が3ポイントライン付近で今までにないぐらいに激しくポジションを移動している。

リョウの目には3人がどこに動くかは見える。

坂田が高木からボールを貰う。

坂田から利根、利根から城嶋と速いながらも淡々とした感じでパスを回す。

しかし、誰も中には入って来ない。

リョウもボールと離れていてはボールをカットできない。

「オレを誘き出そうって魂胆か?」

しかしそんな単純な手に引っかかるリョウではない。

ゴール下で目を光らす。



「ん?」

そこでリョウは気付いた。

彌奈子の姿が先ほどから見えない。

「どこだ?」

周りを確認するリョウ。

後ろを見ると、リョウの後ろ2メートルぐらいのところに彌奈子はいた。



「なるほど、死角をつこうって手か」

ブラッディアイズは自分の視野内の一秒後しか見ることはできない。

よって見えないところには、その力は及ばない。

死角をつくってのは、ついさっきこの能力の事を聞いたばかりにしては良い作戦だ。



「しかし、まだまだだな。いくら死角をとろうがボールが渡らなければ……あ!」

リョウが本当の作戦に気付いた時にはもうすでに城嶋からボールを貰った高木が鋭いドリブルでゴール下へと切れ込んでいた。



「やべっ!」

リョウはシュートは彌奈子が撃つと思い彌奈子の方に集中していたため、その死角から来ていた高木への対応が遅れた。

止めに行こうとした時にはすでに高木はシュート体制に入っていた。

彌奈子は意味深なポジションを取り、最後は自分が撃つぞという雰囲気を出し、実際ボールを持っている高木達への注意を自分へと向けさせたのだ。

目の死角と心の死角の二つを突いた作戦だった。



「ちっ、間に合わん」

ブラッディアイズの能力があるリョウには、自分が今からブロックに行っても間に合わないという事がわかっている。



だが、リョウの目には映っていた。

シュートをブロックする男の姿が。



「なかなか良い作戦だった。だが、オレがその作戦を読んでないとでも思ったか!!」

バシッ

「なっ」

『海藤選手、高木選手のシュートをブロッーーク!!』

家庭科部伝説のOB、海藤進が立ちふさがる。

「リョウは騙せてもオレは騙せん!」



ブロックではじかれたボールはPちゃんが取る。

「うりゃ」

シュッ

Pちゃんはすぐに前方に大きなパスを投げる。

そのパスの先には…小柄な影が一つ。

「しまった、戻れ!!」

「巫女先輩決めろーーー!!」



その小柄な少女は



運動はあまり得意ではないけれど



ロングパスをなんとかキャッチし



ぎこちないながらもゴール下までドリブルし



そしてレイアップでシュートを放つ。





そのシュートは小さな弧を描き



リングにもふれずに



ゴールへと吸い込まれていった。





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