伊上涼は利根、坂田、城嶋、高木の4人を抜いた。

ドリブルのスピード、テクニックなどはついさっきまでと何も変わっていない。

しかし抜いた。

見事なまでにあっさりと…。

残るはゴール前に戻っていた笠原彌奈子のみ。

彌奈子はさっきのシュートをキャッチされたショックから立ち直ってはいなかったが、これまでのバスケット漬けの人生による本能みたいなモノがディフェンスに向かわせていた。

笠原彌奈子はオフェンスばかりが目立つが、ディフェンスも一流である。

今日も何本も相手の攻撃を止めていた。

伊上涼は笠原彌奈子の前で止まり、そのままシュートに行く。

これは誰が見ても強引である。

身長はないが、その身体能力といままで培われてきたディフェンスの感でこの試合でも4本シュートをブロックしている。

当然ながら笠原彌奈子はシュートをブロックに行く。

しかし、そのブロックはボールにかすりもせずに、シュートは何の障害もなくリングに向かっていた。

始めからブロックする場所がズレていたかのように…。



ホームパーティー
Tr.08:ブラッディアイズ




ゴン、バスッ

リョウの放ったシュートはリングに当たりながらも決まった。

『入った〜!! これで9-7。家庭科部あと一点で勝利だ!』

バスケ部全員が不思議な感覚に戸惑いを隠せない。

伊上涼のドリブルをカットに行った4人はまるで自分がそのタイミングでボールを取りに行くのがわかっていたかのようにアッサリとかわされ、シュートを止めに行った笠原彌奈子は、始めからボールの無いところを叩きに行ったかのようにズレたところをブロックしていた。

そして、伊上涼にシュートを許してしまった。







伊上涼には不思議な力がある。

それは一言でいうなら未来予知、いや未来感知と言ったほうが正しいだろう。

何日後、何ヶ月後の事が見えるわけではない。

先が見えるのはたった一秒。

目に映るモノや人などが1秒後に何処にいるか、どう動くかが見えるのである。

正確に言えば1秒後でなく1秒以内の事ならわかると言ったほうがいいだろう。



この力は普段は使われていない。

リョウが使おうと思った時、心の奥底の扉(リョウはゲートと呼んでいる)を開く事で使えるようになる。



こういう能力には何か使った後の後遺症とかしっぺ返しのようなモノがあるというのが世間一般の人は考えるだろう。

だが、リョウのそれにはまったくそういうモノがない。

あるとすれば現実の世界と一秒以内の世界の二つが見えることで少し目が疲れるぐらい。

それは人間として当たり前の事なので、後遺症とは言えない。

後遺症も何も無いことは普通なら喜ばしい事だが、リョウにとってはとても気味が悪いらしく、よほどの事が無い限りこの能力は使わない。



この能力を使っている時、リョウの目は見た目も変わる。

普段から日本人らしからぬ赤茶色の眼球の色をしているが、この能力使用時には人間離れした赤になる

その色が血の色に近いことからこの能力を『ブラッディアイズ』と呼んでいる。









「以上、リョウの能力の解説終了」

「って、何教えてるんですか海藤先輩!」

「お前がブラッディアイズを使い始めたからには相手も能力を知らないとスポーツとしてはフェアじゃないだろう」

「ふむ。まあ、そうですけどねぇ」

この体育館の中でブラッディアイズの事を知っているのは海藤、美袴、綾音、後は昔からの友達が数人知っているぐらいだ。

今まで隠していたというわけではないが、滅多に使わないため知っている人も少ないのである。

「アンタ、ホントに人間?」

笠原彌奈子がいぶかしげ顔で聞いてくる。

「失礼な。父母共に地球人だ」

「そんな能力がある人なんて聞いたこともないわよ」

「オレも物心付いたら使えてたしなぁ。よくわからんよ」

「しかしその話が本当なら、皆がアッサリかわされたのもわたしのブロックが見当違いだったのも説明がつくわねぇ」

「そりゃお前がどこにブロックするかわかったわけだしな」

「まあ、いいわ。能力がわかればこっちにも打つ手はあるし」

そういうと、彌奈子は高木の元へ行き何かヒソヒソと何か作戦を立て出した。

何かしてくる気だな…。

…だが!



「オレの目が赤い内は好きにはさせないぜ。来るなら来い!」

「ふん、言われなくても行くわよ! 勝利に向かって、ね」





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