観客席の一番上。

立ち見の席に藤ヶ峰高校女子バスケ部キャプテン宇佐野はいた。

藤ヶ峰女子バスケ部と言えばここ2年連続インターハイに連続出場している現在県内最強のチーム。

おかげで鷹ノ峰は2位に甘んじている。

なぜ宇佐野がこの場に居るかというと、朝起きて練習に行こうとしたらこの試合の内容をしらせる紙が郵便ポストの中に入れられていたからだ。

鷹ノ峰に入った期待の新人を見ておきたかったので、午後からの練習を休みここにきているわけである。

なぜか家庭科部とバスケ部、しかも男女混合という変わった試合だが意外と面白いものになっている。

家庭科部は予想以上に健闘している。

あのメガネの子は鷹ノ峰女子バスケ部キャプテン高木をよく抑えている。

ウチのレギュラー陣でも彼女を止めるのは容易ではいないというのに…。

しかし、流石に体力がそろそろ限界にきていうるように見える。

男子バスケ部は万年一回戦負けと聞いていたが、今日見る限りではそれほど下手には見えない。

しかし、それぞれ家庭科部の男子勢に互角又は少し押されている。

あいつらは本当に文科系クラブなのか?

だが、あの笠原彌奈子だけはまったく手に負えていない。

3人がかり、4人がかりでディフェンスしても突破してゴールを決めている。

彼女がバスケ部にそのまま残れば、ウチの部のインターハイ3年連続出場するための最大の敵となるだろう。



というか、正直言って彼女に勝てる気しません。

よって、今言える事はただ一つ。

頑張れ、家庭科部。



ホームパーティー
Tr.07:ナスカの地上絵




伊上涼は観察していた。

笠原彌奈子の動きを。

無駄の無いドリブル。

「あゎっ!」

相手を翻弄させるフェイント。

「しまった!!」

そして正確なシュート。

シュッ

その一連の流れが完璧。

まさに俗に言う十年に一人のなんたらである。



スパッ

『決まった〜!!』

放送部のエース、ヨッシーこと園田芳美の声。

彼女の声は普段の声よりもマイクを通した時のほうが引き立つという。

まさに放送をするべきして生まれてきた女であろう。

『これで8-7。バスケ部一点差まで詰め寄ってきたぁ!!』

「…ふむ」

ゲシッ!

「いてっ」

「何相手が真横を通り過ぎていくの見送って『ふむ』よ!!」

「いや、少し考え事を…」

「動きながら考えなさい、動きながら!」

「…それもそうか」

もっともな意見だった。



ここで現在の状況を確認。

スコアは8-7でまだウチがリードしているが、ハンデが7点あったので実際こっちが奪った得点は最初に奇襲で取った1点のみ。

それからは7点連続で向こうに点を許している。



『この流れを変えられるか。新堂選手の3ポイントシューート!!』

ゴンッ

『…は、少し短い』

「あわっ」

『リバウンドは坂田選手』

「とお!!」

『おっと一気にロングパス。速攻に走っていた笠原選手へのボールだ!』

「ナイスパス!」

『これで同点か〜!? ドリブルでゴール下まで持っていきシュート』

シュッ

パシッ

「へっ?」

『おっ? …キャッチ?』

「巫女先輩をやるわけにはいかないからねぇ」

『キャッチです! なんと伊上選手。笠原選手のシュートしたボールをブロックではなくキャッチしたぁ!!』



「むっ…。ありゃ開いたか?」

「そのようですね…」

海藤と綾音がリョウの動きを見て悟る。



「はっ?」

笠原彌奈子はまだ状況がつかめていないようだ。

完璧に決まったと思ったシュートが相手にあっさり止められた。

しかも、ブロックでなくキャッチされたのだ。

普通バスケではシュートをキャッチしようと思うやつなんかは、まずいない。

そのシュートがあらかじめ何処に飛ぶかわかっていれば別の話だが…。



「このままバスケ小説にするわけにはいかないのでね。手っ取り早く決めさせてもらうぞ」

そう言うなり、リョウはドリブルを始めた。





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