土曜日のまったりとした昼下がり。

休みだというのに私立鷹ノ峰高校の体育館は人で賑わっていた。

ウチの高校はちゃんと体育館上段に観客席が設けられているが、そこも満員御礼。

皆が注目する体育館の中央。

ピピーー!!

全身ジャージの女子が笛を吹く。



「選手の人は集合して下さい!」

家庭科部VSバスケットボール部の部員を賭けての戦いが始まろうとしていた。



ホームパーティー
Tr.04:サイを投げる者




「キャプテン、絶対勝ちましょう!!」

「ふふ、当然ね。あなたを渡すつもりもないし新堂先輩もゲットしなきゃね」

「はい!!」

「…息が荒いねぇ、お二人さん」

「伊上涼…」

「ははは。部長と呼んでもいいのだよ、彌奈子よ」

「呼ぶか! そして呼び捨てすな!」

「ははっ。元気でよろしい」

「笠原さん。そいつマトモに相手しない方がいいわよ」

「…はい」

「しかしまあ…」

周りを見回す高木。



「…こんだけ人集めて何のつもりなんだか。わざわざ自分達が負けるところを大衆に晒したいの、伊上君?」

「言ってくれるねぇ、高木。そう簡単にはいかないぜ」

「ふふっ。楽しみだわ」

そういって不適に微笑む高木。

絶対こいつSだな。

しかし、リョウ自信もこれだけの人が来るのは少し予想外だった。

昨日、ポスターを張りまくり校内放送でも流して告知はしたが、わざわざ休みの日に学校に登校してくるなんてことは普通しない。

今回は普通の勝負ではなく部員を賭けた戦いであり、またその人が学校アンケートでお持ち帰りしたい女子No.1の新堂美袴と天才スポーツ少女、体育館のアイドル笠原彌奈子だと言うのがこれだけ集まった主な要因だろう。



「まあ、今日は正々堂々と戦おうではないか」

「その台詞、アナタが言うと嘘っぽくてダメね」

「失礼なやつだ。それじゃあな」

手を軽く上げて、自軍ベンチに帰っていくリョウ。



「…何しにきたんでしょう?」

「多分…」

「たぶん?」

「冷やかしだわね」

「やっぱりそうですか…」



「ぁゎゎ…。緊張してきました〜」

ベンチに帰ると巫女先輩があたふたしていた。

言うまでもないが可愛い。

このバスケットのユニフォーム姿であたふたしている巫女先輩の姿の写真を売りさばいたら今月の昼飯代には困らないなぁ。



「よし、さっそく…」

ゴツン!



「いつっ! 何すんだ綾音」

「別に…、ただなんとなく邪悪な気配がしたから。あ〜そのデジカメ悪霊が憑いてるわ、没収」

ヒョイ



「ああ! 鬼、悪魔、メガネー!!」

「アンタも眼鏡でしょうが…」

「…そういやそうか」

「はぁ…。バカやってないで部長の仕事をしなさい」

「はいよ。みんな円陣になって集まってくれ」

「は〜い」



「巫女先輩を渡すわけにはいかない。なんとしでも勝とう!!」

「はい!」

「いい返事だPちゃん。で、序盤の作戦だが…」

「何かいい作戦があるの?」

「昨日2分ほど考えたが全く思い浮かばなかった」

「……」

一同は同じ事を心の中で叫んでいただろう。

ダメじゃん、と。



「…我が幼馴染ながら使えない。というか思考時間短すぎ」

「ははは。リョウよ何のためにオレが人を集めさせたと思ってるんだ?」

「そういやなんで?」

「お前いらん事に頭がまわるのに、こういう事にはすごい鈍感だなぁ。まあいい、その事を含めた序盤の作戦を与えておこう。もう少し集まってくれ」

そしてなにやらゴニョニョ話す家庭科部の5人(一人OB)。



「…なるほど」

「ふえ〜、さすが進ちゃんです〜」

ピピー!!

審判を任されたバスケ部の女子が笛を吹く。

「選手の人は集合して下さい!」

試合には関係はないが、審判を任されている彼女の名前は佐井。

サイを投げるのは佐井ってか。

なかなか洒落た演出だ。



「時間か…。よーし、気合入れていくぞー」

「は〜い」

Pちゃんだけが元気な返事をする。

綾音はハイハイわかってますよってな顔して澄ましてるし、海藤先輩はもうやる気マンマンでダッシュしていったし、巫女先輩は試合開始の笛でほぐれかかっていた緊張がまたぶり返してぁゎゎ…を連発しているし…。

このチームワークで大丈夫なんだろうか。

なんだか不安になってきたが、よく考えればいつも通りと言えばいつも通りである。

「ま…行きますか」



コートの中央に並んで立つ両チーム。

相手のメンバーは男子が城嶋、坂田、利根、女子が高木と笠原と海藤先輩の予想がピタリだ。



「ルールの確認をしておきます。2ポイントシュート、3ポイントシュート関係なく1ポイントとし、10ポイント先取で勝利。家庭科部には7点のハンデがあるので7−0から始めます。時間は無制限。先取交代なし。その他は通常のバスケットボールと同じです」

「OK」

「わかってるわ」

「それではジャンパーの人を中央に残して他の人はポジションに付いてください」

「期待はしてないが頑張れPちゃん」

「ははは。部長は正直だなぁ」

Pちゃんはウチの部じゃ一番上背があり179cmあるが、向こうのジャンパーの坂田は186cmの巨漢である。

7cmの差はかなり大きいが…。



「それでは試合開始!!」

ピー!!

笛が鳴ると同時に真上に放たれるボール。

熱戦の幕が今開かれた。





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