「頼もう!」

体育館に入ると同時に大声で叫ぶバカ一人。



「私に幼馴染なんかいませんよっ、と」

「ぁゎゎ…」

こういう事には慣れているとはいえ恥ずかしいので他人のフリをする者が二名。



「面白くなりそうだなぁ〜」

どうなるか興味心身でついてきた者一名。



「え〜っと…。あ、居た! ちょっとキミ」

「へっ? わたし?」

小柄なツインテールの少女が振り向く。



「そうそこのペチャンコなキミだ」

「誰がペチャンコか!!」

「キミ、笠原彌奈子さんだね」

「そ、そうだけど…」

「ウチに…家庭科部に入らないか?」

「はぁ?」





ホームパーティー
Tr.02:狼と狸




「もう一度言おう。家庭科部に入れ」

ガスッ!

横にいた綾音の裏拳がリョウの顔面にヒット。



「ぐほぉ!」

「単刀直入過ぎるのよ、アンタは。…ええと、笠原さんだっけ?」

「あ、はい」

「私、二年の坂本綾音。私たち家庭科部なんだけど、笠原さんが料理上手って…」

クイッ

後ろで倒れてるリョウを親指で指を刺す。



「そこに伸びてるヤツから聞いたんだけど。…まあ、いわゆるヘッドハンティングっていう奴かな」

「はぁ…。なんとなく状況がわかって来ましたが…」

「そういう事で入れ」

「あわっ、いつの間に復活したのですか!」

ズッキューン

美袴の姿を見た瞬間、彌奈子の脳天に電撃が走る。



「か、可愛い…」

「へ?」

「あ、やっ、な、なんでもないです!」

「でさ、入ってくれる気はない?」

「え〜っと、私確かに料理は好きですけど〜。やっぱりバスケが…」

「ほう、なぜそこまでバスケにこだわる」

「それは、プロになって家族にラクさせてあげたいし」

「料理人になってお店を開いて成功してもお金は稼げるぞ」

「そ、それはそうだけど…」

「コラコラ、ウチの部員を堂々と口説かないでくれるかな」

女子バスケ部主将の高木が口を挟んでくる。



「そうだ、笠原さんは渡さないぞ」

こっちは男子バスケ部の主将城嶋だ。



「なんだ城嶋か」

「なんだじゃない。笠原さんは男子バスケ部のアイドル。彼女目的で入ってきた一年も少なくないのに笠原さんに抜けられたらウチの存続が危うい」

「ふん。そんな不純な目的で入ってきた一年なんか入れても強くはならんぞ、万年一回戦敗退の男子バスケ部さん」

「な、貴様言っていいことと悪い事が  

「…城嶋君は少しだまってて。ややこしくなるから」

「うっ、ハイ」

こいつ相変わらず高木には頭が上がらないのか。

「伊上君、笠原さんは確実にウチの中心になる選手よ。それを持っていこうだなんて、どうかしてるんじゃない?」

「いいじゃん女子バスケ部は強いんだから」

「あのね。ウチが藤ヶ峰に勝つには笠原さんの力が必要なの」

そう、女子バスケ部は県内1、2を争う強豪だが、ここ2年間はライバルの藤ヶ峰にやられっぱなしなのである。

普通に考えれば学校のためになるのは彌奈子がバスケ部にいるほうが良いことだが、そこで引かないのが伊上涼という男だ。



「よし、勝負だ!」

「は?」

またこの男はとんでもない事を言い出した。



「このまま断られても俺は諦めがつかないままバスケ部にまとわりつくだろう。だが、勝負なら話は別、勝負で負けたらきっぱり諦めよう」

「伊上君、それはムチャクチャよ。だってこっちにとって利益がないもの」

「ふむ。だったら…」

ビシッ!

リョウが美袴を指差す。



「ふえ?」

「こっちが負けたら巫女先輩を差し上げよう! マネージャーに使ってもお持ち帰りしてもOKだ」

「な、なんだってー」

バスケ部の男子女子問わず全員が叫ぶ。



「どうだ、ノルか?」

「どどどど、どうする、笠原さん?」

どもり過ぎだぞ高木。



「やりましょう!」

「いいの?」

「ええ、そりゃあもう。…勝てばあんな事やこんな事も…ぐふふ」

ちょっと怖いですよ笠原さん。



「よし、計画通りだ」

「ぁゎゎ…。計画通りだ、じゃないですよ〜。人権侵害ですよ〜」

「で、勝負の方法は?」

「こっちからふっかけたしな、当然そちらの得意なもので勝負させてもらおう」

「ということはバスケで?」

「うむ。こっちが男子3人、女子2人だからそちらも男女をその数で出してくれ」

「OK。…じゃあ女子は私と笠原さんね。男子は…城嶋君選んどいて」

「おう、任せとけ」

「あとルール変更と少しハンデを貰うぞ」

「どんな?」

「時間制じゃなくてポイント制。2ポイント3ポイントシュート関係無しに入れば1点。計10点決めたほうが勝ち。それでハンデは…そうだなぁ所詮は万年一回戦負けと落ち目のチームの混合だ、5点もあれば勝てるかな」

「な、貴様!」

「伊上君、鷹高女子バスケ部をなめてもらっちゃ困るわ。7点よ、7点あげるわ!」

「そうか、じゃあ7点もらっとこう」

「勝負はいつ?」

「今日が木曜だから…土曜日の午後2時開始ってのでどうだ」

「了解」

「それじゃあ土曜に」

そういってリョウは後ろでずっとニヤニヤしてるPちゃん、半分呆れながら見ていた綾音、ブーブー文句を言っていた美袴を連れて体育館を出る。



「流石部長。人を逆なでするの上手いですねぇ」

「それは誉めいてるのか?」

「もちろん」

そんなこんなで部室に着く。

部室は一階なので体育館とはそれなりに近い。

そういえば家庭科室って一階にあるの以外見たことないなぁ、とかふと思う。

やはり火気を扱うからだろうか。



「…あっ、そう言えば…さっきのやり取りの中で疑問に思った事があったんだけど」

「ん?」

「ウチ4人しかいないのに5人いるとか言ってなかった?」

「ああ、その事か。…お前も知っているだろ、こういう事になったら必ず顔を出したがる人を」

「う、まさか…」

「誰ですか?」

そうかPちゃんは知らないのか。

ガラガラガラ

「はははは。それはオレの事だよ一年生君!」

その人は、なぜか窓から現れた。





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