昼休みという学生にとっては至福の時間。
3人の生徒がある人に呼び出され、集めさせられていた。
そんな大事な時間にわざわざ集められたのだからそうとう重要な事だろう皆が思う。
そして集めた人の第一声。
「駒が足りない」
「……は?」
集められた3人は揃って同じ台詞を発した。
ホームパーティー
Tr.01:呼び出し
ここは私立鷹ノ峰高校。
町内唯一の私立高校である。
4月もそろそろ終わりかなぁという時期の事。
集められた人、集めた人は全員同じ部活の部員であり、そしてここは家庭科室。
そう、生徒達は家庭科部員である。
部員達を集めたのはこの部活の部長である伊上涼、その人である。
皆からはリョウと呼ばれているこの男、かなり学校の問題児だという。
成績が悪いわけでもなければ、ツッパってるというわけでもない。
成績は学年真ん中ぐらい。
が、この真ん中ぐらいというのが問題なのである。
なぜなら彼はIQ220の男なのである。
その事は本人は知らないが、学校側は知っている。
その世界でもトップクラスの頭脳指数の持ち主がウチの学校で成績が中ぐらいとあれば学校の教育の仕方が疑われる。
まあIQが高い=賢いといのは間違っているが、教師側からすれば面白くない存在だろう。
はたして、その頭脳はどこに使われているのか…
「部長、今なんと?」
入部して一ヶ月もたっていない一年生のポール・ブラウニーが白髪をなびかせながら聞いてくる。
「だから駒が足りない、と言ったのだよPちゃん」
Pちゃんとはポールのあだ名である。
「…意味がわからないけど?」
と言ったのはリョウと幼馴染の坂本綾音。
まあ意味がわからないのはいつもの事だけど、と付け加えた。
「つまり…もう一人新戦力が欲しい、ということだ」
「ああ、ボクでは戦力不足と」
「うーん、そういうわけではない。が、しかし、全国一を目指すからには戦力は多いほうがいいだろ」
「ぁゎゎ…あの…家庭科部に戦力も全国で一番とかも特にないと思うのですが」
この小さな体から可愛らしい声を発している人物は3年の新堂美袴。
可愛らしいのは声だけでなく外見もだ。
身長140cm。
腰まで伸びた髪を後ろでくくっている。
言い忘れていたがリョウと綾音は2年。
3年は美袴ただ一人。
本来なら彼女が部長を勤めるべきだが、今年は家の手伝いが忙しくてあまり部活に出られないらしく、部長を2年に譲ることにした。
ちなみに実家は神社で、お手伝いとは巫女のお仕事である。
なので彼女の名前を『巫女』と思っている人は多い。
というか、実際この部活の人もみんな『巫女先輩』と呼んでいる。
そんな事を考えてる内に知らず知らずのうちにリョウはじーっと睨んだように美袴を見ていたようだ。
その視線に気付いた美袴は少し顔を赤くして俯き小さく「…ぁゎゎ」とか言っている。
くそー可愛いなぁもう!
「部長!」
「なんだね、Pちゃん」
「巫女先輩持って帰っていいですか?」
「む、バカヤロウ! 先輩はオレが持って帰るんだ!」
「部長といえど譲れませんねぇ」
「やるかぁ」
両者上着を脱ぎ始め臨戦体制に入る。
「はぁ…。バカばっか」
「あわわわ…どうしましょう坂本さ…って坂本さん何なんですかそのフライパン!!」
「家庭科室ならフライパンぐらいはあるでしょう」
「そういうことじゃなくてどういう風に使用するのか…ぁゎゎ」
「ふむ。使用方法は実際見てもらえばわかりますよ」
そういって普段無表情な顔に少し怖い笑みを浮かべると、フライパンを剣のように構える。
「行きますよ〜部長!!」
「かかってこいP!!」
「はいそこ、ストップ! 坂本流奥義、双覇斬!!」
ヒュッ!!
カカーン!
風が吹きぬけたと思った次の瞬間、部室で暴れていた2人の男はおでこにコブをつくりうずくまっていた。
「ぬ、ぐ…あ、綾音さん? ちょっと…いや、かなーり痛いのですが…いつつ」
「部室散らかさないでくれるかしら。いつも掃除するの私なんだし」
「フライパンで奥義かまされたら意識が飛びそうになるんですが」
「よく飛ばなかったわね」
「慣れてるからな。ほら、慣れてないPちゃんのびてるじゃないか!」
「あらあら、ナムナム」
「ひでぇ」
「まあPさんはいいとして話の続きをお願いします」
「いいのか…巫女先輩ときどきクールだな。まああれだ、もう一人ぐらい新入部員が欲しいって言ってるんだ」
「ふむ…なぜに?」
この学校は3人いれば部活として認められるため今のままでも問題はない。
よって様々な部活が乱立している。
体育系、文科系合わして60を超える部活が存在するらしい。
「巫女先輩、今年家の手伝いとか受験とかであまり来れなくなるだろ。そうなると料理教えてくれる人がいなくなるじゃん」
顧問が産休という今の現状で名前だけでも家庭科部なのだから料理を作らないわけにもいかない。
ここで、参考までにそれぞれの人物の料理の上手さを紹介。
新堂美袴
和食に関してはもうお店を開けるぐらいの腕。
和食以外もそこいらの主婦よりは遥かに上手である。
坂本綾音
元々料理は家で全くしなかったので、入部当時はかなり酷かったが、現在では簡単な料理なら普通に作れるようにはなっている。
ポール・ブラウニー
入る部活をアミダくじで決めたただのアホ。
それでもお菓子などを作るのは結構上手である。
伊上 涼
家庭的な女性がいそうだからという理由だけで入ってきた大バカ者。
料理は一人暮らしのたしなみ程度の物しか出来ない。
「まあ、確かにそうだけど…」
「でも、一年の誰が料理上手いとかわからないのでは?」
いつの間にか復活していたポールが尋ねる。
「ふっふっふ。その辺の下調べは済んであるさ」
「と、いうことはもう見当がついていると」
「うむ」
リョウはそう言うと数枚の写真を取り出す。
それはすべて同じ人物が写っていた。
早朝ランニングしているところに、お弁当を食べているところなど、中にはパジャマ姿の物も…。
「1−A笠原 彌奈子。両親が共働きなので家の家事は彼女がこなしている。当然お弁当も自分で作っていて、それを分けてもらった友達がとても美味しかったと言っていた。長年の家事で養われた料理の腕は本物だろう。ちなみに身長は156cm。3サイズは上から80、58、85だ」
「……」
「…なぜ皆白い目でこちらをみているのだ?」
「どっからそんな情報を…それにこの写真も隠し撮りっぽい…」
「ぁゎゎ・・・犯罪者さんですか?」
「失礼な!! ちゃんと正規ルートから入手したものだ!」
「なんの正規なんだか…怪しすぎる…」
「でも部長。この子たしか中学のときバスケで県内MVPに選ばれたので有名で、今もバスケ部に入ってるはずですが…」
「そのぐらいは知っている。Pちゃん、部活の正式入部の申込書を提出するのはいつだい」
「来週の月曜ですが…」
そう、一年は今まだ仮入部という状態で正式入部はしていない。
「…リョウ、まさかアンタ」
「そう、正式入部する前に奪い取る」
「えぇー!!」
またも部長以外の3人は同じ台詞を発することとなった。
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